DragonAge

作家・黒川裕子のブログ

【御礼】『#マイネーム』韓国版が出版されます!

『#マイネーム 』(さ・え・ら書房)の韓国語版の見本を頂きました!

わーパチパチパチ!

海外で翻訳出版していただくのは初めてですので、ふわふわした気持ちです。

去年だったか、最初にオファーがあった時には実感がありませんでしたが、いざ手に取ると感慨深いです!

海外の出版社→仲立ちのエージェント→日本の版元さん

という順序でオファーがくるのですね。

文芸翻訳家さんの作業時間のバッファーもあって、いつ見本が上がってくるか、さっぱりわからなかったのですが、終わってみれば翻訳ものにしては意外と速く仕事が進んだのだなと思ったり。

 

このお話に登場する新世代の在日コリアン、日本の夫婦別姓議論、学生の自立などが韓国のYA世代にどう受け止められるか楽しみ。

 

また、さ・え・ら書房さんと韓国側の版元さんに無理を申し上げて、取材でお世話になり、去年惜しくもお亡くなりになった金朋央さんへの追悼の辞、兼、韓国の若い読者さんへのメッセージを巻末に記載していただきました

(日本版の巻末メッセージとは違うものです)

 

日本の読者さんはお読みになる機会がないかと思いますので、以下に記しておきます。

 

「本書の執筆にご協力いただいた金朋央様が、2022年2月25日に47歳で死去されました。ご遺族様に心からお悔やみ申し上げます。

情にあふれ、他者を助けつづけ、多くの人に愛され、短くも輝く「星」のように独自の人生を生き抜いた一人の在日コリアン男性が日本にいたことを韓国のみなさまに知って頂きたく、業績をまとめてここに記します。

金朋央様は、富山県出身の在日コリアン3世で、お母様は韓国で生まれ育ちました。東京大学工学部大学院で応用化学を学ばれましたが、大学時代に在日コリアン学生運動に出会って、活動家としての道を選ばれました。

サハリン残留朝鮮人慰安婦など、朝鮮半島出身者の戦後補償の問題に取り組む一方で、在日コリアン以外の在日外国人全般の支援に活動を広げました。

特に東日本大震災以降は、無料電話相談を担当されるなど、日本語がわからない人や在留資格の不安定な在日外国人の暮らしの問題にも取り組まれました。
2021年の入院直前まで、「助けを求める人がいるのだから」と苦痛をおして活動にはげまれました。

私が知る金朋央様はどこか少年のような雰囲気のある、とても優しい目をした方でした。短いご縁でしたが、おすすめの韓国料理店を教えてくださるなど、気さくに接してくださいましたね。その一方で、歴史的な背景を無視してコリアンネームについて書いてほしくはないと、日本人である私に厳しくおっしゃいました。

最後に連絡をとったとき、金朋央様は本書の韓国語版が出版されることを、心から喜ばれていました。

朋央さんがこの本を天国で読んでくれますように。そのお顔が穏やかで、ほほえんでいますように。

本書では、これまであまり描かれなかった在日4世以降のティーンエイジャーたちの悩みやアイデンティティについて少し触れました。

韓国の若い読者のみなさまに、共感や想像をもって読んでもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。豊かなバックグラウンドを持つ彼らのこれからを、著者も文学という形を通して応援していきたいと思っています。

韓国の読者のみなさまへ、親愛をこめて。

黒川裕子」

 

国籍や生まれた場所をとわず、たくさんの若い読者に届きますように、という願いでいっぱいです。

児童文学に携わる身になって、本当によかったと思います。

これからも書き続けていけば、またいいことがあるでしょうか。

私が大事だと思うことを、届けることができるでしょうか。

「いま」「それ」を必要としているだれかに。