DragonAge

作家・黒川裕子のブログ

短編「森の奥」と、黒川の児童文学的同人遍歴

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注)このブログでは、主に講談社児童文学新人賞で佳作をいただいてからの活動について記載するつもりです。

もちろん過去にノベルスで出版した作品たちも大切な私の一部ですが、いまは児童書の世界で腰をすえて書いているため、まずはそちらを(つうかノベルスの作品はほとんど絶版になってるし…ボソッ)。

児童書デビューからブログ開設までけっこう時間が経っていますので、直近の活動からつらつらと遡っていきたいと思います。

同人誌「鬼ヶ島通信」に短編を寄稿

さて、去年2018年の12月発行の同人誌「鬼ヶ島通信」に短編を寄稿しました。

上のツイートにあります通り、同人誌に寄稿させていただくのはこれがはじめて。何度目かの幸運なデビューとなります^^

同人誌と黒川の関わり

子どもの読み物に詳しい方はご存知でしょうが、児童文学でいう「同人誌」「同人」とは、世間一般のいわゆる同人誌のイメージとは少し異なります。

コミケなどでも、創作同人誌が頒布されていることは存じています)

現在の児童文学ジャンルにおける同人誌・同人活動は、いうなれば児童書作家のゆりかごです。

児童文学を愛するアマチュアの作家(プロもいますが)や批評家たちが、それぞれの同人の会を結成して、合評会や読書会を主催し、作品を掲載する場として同人誌を発行していることが多いようです。

規模が大きな同人誌では、投稿も受け付けていたりします。

ノベルス作家として活動していた時代に、日本児童文学者協会の「創作教室」で児童文学を学んだのが私の児童書作家としてのスタート地点ですが、講座が終わったあと同人活動のまねごともさせてもらいました。

まず創作教室でお世話になった恩師のお一人、泉啓子先生が長く関わってこられた「にじゅうまる」という同人の会にご紹介いただき、何度かお邪魔いたしました。

ずっと一人で書いてきて「創作とは鏡のように独りで自分と戦い生みだすもの」、という思いが強かったので、はじめは些か懐疑的な思いで参加したのを覚えています。

生意気ですが、「毎度なじみの身内同士で褒め合ったりけなしあったりすることに何の意味があるのか…」という気持ちがあったのですね。正直。

でも、実際におとずれた合評の場は予想とは違っていました。

すでにプロとして華々しく活躍されている方も参加する合評の場は、さながら戦場……。うっかり下手なブツを出せばボロカスに叩かれるというホラー映画のような場……しかも叩かれるのはクリーチャーではなく愛する分身のような自分の作品という。

創作教室では、お金を出して参加する講座ですので、まだしも遠慮という名の忖度(笑)が若干はたらいているような気がしていたのですが(もちろん内容に妥協はなく、あくまで講師陣の表現がまだお優しいという点で)、同人では、そんなこともなく、ちっともお優しくない(^0^)

当時私は一応プロとして何冊も本を出していましたが、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

編集者の視点と、作者の視点と、読者の視点はおのずと違ってきます。

プロであるからこそ、商業のフィルターを通さない「生」であり「素」の率直な意見というのは、本当に得がたいものでした。何というかな、生き餌みたいな。←表現

フィルターされていないことの強さ、といいますか。

「この人ちゃんと読んできたのかな(やべーぞ…)」という的外れな意見もあるのですが、これは商業漬けになっている制作サイドからは絶対出てこないだろうなという、宝物のような視点も玉石混淆でまじっている。それが私の知っている同人の合評会です。

 結局、いろんな事情があって定期的な同人活動はやめてしまいましたが(所属するってことがとにかく苦手な私…)、貴重な経験となりました。

で、短編「森の奥」

 ということで、短期間で同人活動から足を洗った私が、はじめて寄稿したのが「鬼ヶ島通信」です。

こちらは、多くの著名プロ作家を輩出している登竜門のような側面を持つ同人誌です。私も、以前から名前だけは存じていました。

講談社の担当編集者さんがこちらの同人誌に関わりがあるご縁で、寄稿のお話をいただきました。何というラッキー!

しかも、ちょうどリニューアル号ということで、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ(三度)、執筆陣が豪華でした。

あのね、私が学生時代から敬愛してやまない荻原規子先生と同じ誌面に載ることができたとかもう訳わからんどこの世界線(絶句)

私が寄稿したのはファンタジー短編です。

ファンタジーと名のつくものを書くのは、本当に久しぶりでした。

とはいえ、背伸びしても失敗するだけですので、いつも通り、そのタイミングで私が書けるベストなものを出しました。

「森の奥」。ある問題を抱えた女子中学生が、森をさまよって不思議な体験をする話です。

同人誌に出すには、ちょっと商業的かなとも思ったのですが(挑戦と革新が足りんというイミで)、夜の森の美しさを表現したかったのでこちらを。

(ですので、このアイキャッチ画像なんですね。暗くてビックリした?笑)

作中でとあるガジェットを効果的に使うことができたかな、と、そこだけは自負しております。

 どんな作品でも、一つは新しいコトをしないと、書く意味ないですもんね。

短編「森の奥」は、会員制同人誌「鬼ヶ島通信」で読めます。

こちらのサイトから絶賛会員募集中ですので、ぜひ覗いてみてくださいね。通常は1年間/2号分のスクリプト制ですが、70+1号だけの購入もできるそうです。↓↓

鬼ヶ島通信HP

http://onigashima-press.com/

鬼ヶ島通信といえば、発行の打ち上げも大変楽しかったです。そちらはまた機会があれば。